ねじりについて考えたことがありますか? この現象は私たちの日常生活、建築、運動力学、そしてエンジニアリング全般で頻繁に見られます。 今回のブログでは、ねじりに関連する4つのトピック:トルク、ねじり応力、ねじれ角、そしてねじれ剛性について詳しく解説していきます。
[toc]
1. トルク
トルクとは何でしょうか? トルクは回転運動を生み出す力のことを指します。 例えば、自転車のペダルを踏むとき、私たちはペダルに垂直な方向に力を加えて、車輪を回転させます。 この力が作用する距離(ペダルの半径)と力の大きさの積が、トルクとなります。 数式で表すと、
ここで、\(T\)はトルク、\(r\)は力が作用する距離、\(F\)は力、\(\theta\)は力と力が作用する距離の間の角度です。
2. ねじり応力
ねじり応力は物体がねじれるときに生じる応力で、単位面積当たりの力として定義されます。 ねじり応力は、材料のねじれの度合いと密接に関連しています。 例えば、ネジを差し込むとき、ネジはトルクの影響でねじれ、それに伴いねじり応力が発生します。 ねじり応力は
のように表現できます。
\(\tau\)はねじり応力、\(T\)はトルク、\(r\)は物体の半径、\(J\)は断面二次モーメント(ねじりに対する抵抗度を示す)です。
ねじり応力の導出方法
- まず、物体に働くトルク \( T \) は、力 \( F \) と力の作用点までの距離 \( r \) の積で表されます。すなわち \( T = F \cdot r \) です。
- 物体の内部の任意の点におけるねじり応力 \( \tau \) は、単位面積あたりの力、すなわち \( \frac{F}{A} \) で表されます。
- これらの等式を組み合わせて \( \tau = \frac{T \cdot r^2}{A \cdot r} = \frac{T \cdot r}{J} \) を得ます。
- ここで、断面積 \( A \) と半径 \( r \) の二乗の積、\( A \cdot r^2 \) は断面二次モーメント \( J \) と呼ばれます。
- したがって、\( \tau = \frac{T \cdot r}{J} \) というねじり応力の数式が導かれます。
この式は、円筒形状の物体に対してのみ適用可能で、物体の形状や物質によっては異なる数式が必要となります。また、この式は物体が線形弾性範囲内でねじれを受けている場合のみ適用可能で、それを超えるねじれには適用できません。
3. ねじれ角
次に、ねじれ角について考えてみましょう。 ねじれ角は物体がねじれるときの角度を指します。 ねじれ角は物体がトルクによってどれだけ回転したかを示します。 例えば、ネジを回すとき、1回転するごとにネジのねじれ角は360度増えます。 ねじれ角は
の数式で計算できます。
\(\phi\)はねじれ角、\(T\)はトルク、\(L\)は物体の長さ、\(G\)は剛性係数(材料がねじれに対してどれだけ抵抗するかを示す)、\(J\)は断面二次モーメントです。
ねじり角の導出方法
- 物体にねじり力が作用すると、物体の内部ではねじり応力 \( \tau \) が生じます。前述の通り、\( \tau = \frac{T \cdot r}{J} \) です。
- ねじり応力 \( \tau \) は物体のせん断応力とも考えられ、せん断応力は物体のねじれ角 \( \varphi \) と物体のせん断弾性率 \( G \) の積で表されます。すなわち \( \tau = G \cdot \varphi \)。
- これらの等式を組み合わせて \( \tau = \frac{T \cdot r}{J} = G \cdot \varphi \) を得ます。
- ここで \( \varphi = \frac{T \cdot r}{J \cdot G} \) となりますが、物体の半径 \( r \) に比例した変形が物体の長さ \( L \) 全体にわたって一様に生じると考えると、\( \varphi = \frac{T \cdot L}{J \cdot G} \) というねじれ角の数式が導かれます。
この式は物体のねじれによる変形を定量的に評価するための重要なツールであり、エンジニアリングの多くの分野で利用されています。
4. ねじれ剛性
ねじれ剛性(トルショナル剛性)は、材料がねじり力(トルク)に抵抗する能力を表すパラメータで、単位トルク当たりのねじれ角(つまりトルクに対する回転の「剛さ」)を示します。ねじれ剛性Cは以下の数式で表されます。
ここで、\( C \)はねじれ剛性、\( T \)は物体に作用するトルク、\( \varphi \)はねじれ角、\( G \)は物体のせん断弾性率、\( J \)は物体の断面二次モーメント(ねじり定数)、\( L \)は物体の長さです。
以上の数式の導出について説明します。
- ねじれ角 \( \varphi \) とトルク \( T \) の関係式、\( \varphi = \frac{T \cdot L}{G \cdot J} \) から直接導かれます。この関係式をトルク \( T \) について解き直すと、\( T = \varphi \cdot \frac{G \cdot J}{L} \) が得られます。
- ここで、 \( \varphi \) で \( T \) を割るとねじれ剛性 \( C \) が得られます。つまり、 \( C = \frac{T}{\varphi} = \frac{G \cdot J}{L} \) となります。
したがって、ねじれ剛性は物体のせん断弾性率と断面二次モーメントの積を物体の長さで割った値となります。物体の形状や材質によっては、この計算式が異なる場合があります。
まとめ
以上、ねじりに関する4つのトピックについて詳しく解説しました。 ねじりは物体がトルクを受けることで起こり、その結果、ねじり応力やねじれ角が生じ、物体のねじれ剛性がこれらの影響を決定します。
このように、ねじりに関する各パラメーターは密接に関連しており、一つを理解するためには他のすべてを理解する必要があります。 今回の内容を通じて、ねじりの理解が深まったことを願っています。
また、これらの概念はエンジニアリングや物理学の多くの分野で活用されていますので、今後の学習や仕事においてもぜひ役立ててください。
材料力学 (JSMEテキストシリーズ)
材料力学を基礎から学びたい人むけの参考書。
練習問題を通して、材料力学の考え方を学べます。
JSMEは日本機械学会が
出版している本です。
どんな本がいいかわからない
という人は、最初に手に取ってみては
いかがでしょうか。
材料力学(JSMEテキストシリーズ)をAmazonで見てみる
材料力学 (機械系教科書シリーズ)
こちらも同じく材料力学を基礎から学びたい人むけの参考書。
大学の授業でも
教科書として使われています。
基礎から学ぶのには
便利な一冊です。
材料強度学 (機械系 教科書シリーズ)
こちらは材料科学です。
はりの曲げや降伏応力といった
工学的観点ではなく、
材料の性質について学べます。
たとえば、
分散強化や固溶強化の材料が
強度が高い理由や、転移やすべりなど、のメカニズムを
理解できます。
強度設計よりも、
なぜ、この材料が強いのか?や
どんな材料を作れば強度が上がるかを
理解するのに役立つ本です。