技術系 材料力学

【深堀】主応力

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工学や物理学の領域において、物体に生じる力を理解するためには、'主応力'という概念が欠かせません。主応力は、物体に加えられる複雑な応力状態を、より単純な形で表現するための工夫です。これにより、素材の強度や耐久性、そして物体の挙動について予測を立てることが可能となります。

この記事では、初心者向けに主応力の基本的な概念から、その理論的背景、そして実際の応用までを解説します。

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初心者のための「主応力」の概念とその重要性

主応力とは、物体に作用する力が最大となる方向における応力のことを指します。これは材料がどのように力に反応するか、つまり材料がどの程度変形するかや破壊するかを理解するために、極めて重要な概念となります。

例えば、一定の力を持つ風が建物に吹きつける場合、風の力が最も強く作用する箇所(すなわち主応力が最大となる箇所)を把握することで、建物がどれほど耐えられるか、またどの部分が最初に破損するかを予測することが可能になります。

3種の主応力

主応力は、物体に作用する応力の中で最も大きい値を持つ方向における応力を指します。3次元の物体では、通常、主応力は3つ存在します。それぞれ最大主応力、中間主応力、最小主応力と呼ばれます。

最大主応力(Principal Stress, σ1)

最大主応力は、物体内のある点で作用する応力のうち、その点での応力状態において最大の値を持つ応力です。

物体が外部から受ける力によって、その点での応力が最大となる方向に最大主応力が発生します。一般的に最大主応力の向きに直行した方向で破壊します。

中間主応力(Intermediate Principal Stress, σ2):

中間主応力は、最大主応力と最小主応力の間に位置する主応力です。物体内のある点で作用する応力のうち、その点での応力状態において2番目に大きい値を持つ応力です。最大主応力と最小主応力の間の応力状態を表します。

最小主応力(Minor Principal Stress, σ3)

最小主応力は、物体内のある点で作用する応力のうち、その点での応力状態において最も小さい値を持つ応力です

 

主応力の理論的背景

主応力の理論は、固体力学という物理学の分野から派生しています。物体に力が作用すると、それが物体内部の各部分にどのように分散するかを計算するために、応力テンソルという数学的なツールが使用されます。

主応力は、この応力テンソルを対角化(すなわち、特定の方向における応力が最大になるように調整)することで得られます。主応力は通常、最大主応力、中間主応力、最小主応力の3つがあり、それぞれの応力が物体の異なる方向で最大になります。

主応力の導出

主応力を求めるためには、応力テンソルの固有値問題を解く必要があります。

2次元

2次元の応力テンソルは次のように表現されます。

\(\sigma = \begin{bmatrix} \sigma_x & \tau_{xy} \\ \tau_{yx} & \sigma_y \end{bmatrix}\)

ここで、\(\sigma_x, \sigma_y\)はそれぞれx方向、y方向の正規応力、\(\tau_{xy}, \tau_{yx}\)はx-y平面上のせん断応力を表します。

この2次元の応力テンソルの固有値を求めるためには、以下の行列式を0とする固有値方程式を解く必要があります。

\(\begin{vmatrix} \sigma_x - \lambda & \tau_{xy} \\ \tau_{yx} & \sigma_y - \lambda \end{vmatrix} = 0\)

この行列式を\(\lambda\)について展開すると、以下のような2次の方程式が得られます。

\(\lambda^2 - (\sigma_x + \sigma_y) \cdot \lambda + (\sigma_x \cdot \sigma_y - \tau_{xy} \cdot \tau_{yx}) = 0\)

ここで、\(\lambda\)は主応力を表します。この二次方程式を解くことで、2つの主応力(\( \sigma_1, \sigma_2 \))が得られます。

ただし、一般的には2次方程式を解くのは比較的容易であるため、解析的な手法が主に使われます。

このように、2次元の応力状態における主応力の求め方は、応力テンソルの固有値を求めることで主応力を導くことが可能です。

3次元

3次元の応力テンソルは次のように表現されます。

\(\sigma = \begin{bmatrix} \sigma_x & \tau_{xy} & \tau_{xz} \\ \tau_{yx} & \sigma_y & \tau_{yz} \\ \tau_{zx} & \tau_{zy} & \sigma_z \end{bmatrix}\)

ここで、\(\sigma_x, \sigma_y, \sigma_z\)はx, y, z方向の正規応力、\(\tau_{xy}, \tau_{yx}, \tau_{xz}, \tau_{zx}, \tau_{yz}, \tau_{zy}\)はそれぞれ対応する平面上のせん断応力を表します。

この3次元の応力テンソルの固有値を求めるためには、以下の行列式を0とする固有値方程式を解く必要があります。

\(\begin{vmatrix} \sigma_x - \lambda & \tau_{xy} & \tau_{xz} \\ \tau_{yx} & \sigma_y - \lambda & \tau_{yz} \\ \tau_{zx} & \tau_{zy} & \sigma_z - \lambda \end{vmatrix} = 0\)

この行列式を\(\lambda\)について展開すると、以下のような3次のキュービック方程式が得られます。

\(\lambda^3 - I1 \cdot \lambda^2 + I2 \cdot \lambda - I3 = 0\)

ここで、\(I1, I2, I3\)はそれぞれ応力テンソルσの第一不変量、第二不変量、第三不変量を示します。それぞれの不変量は以下のように定義されます。


\(I1 = \sigma_x + \sigma_y + \sigma_z\)
\(I2 = \sigma_x \cdot \sigma_y + \sigma_x \cdot \sigma_z + \sigma_y \cdot \sigma_z - \tau_{xy}^2 - \tau_{xz}^2 - \tau_{yz}^2\)
\(I3 = \sigma_x \cdot \sigma_y \cdot \sigma_z + 2 \cdot \tau_{xy} \cdot \tau_{xz} \cdot \tau_{yz} - \sigma_x \cdot \tau_{yz}^2 - \sigma_y \cdot \tau_{xz}^2 - \sigma_z \cdot \tau_{xy}^2\)

この方程式を解くことで、3つの主応力(\( \sigma_1, \sigma_2, \sigma_3 \))が得られます。

ただし、一般的には3次の方程式を解くのは困難であるため、数値的な手法(例えば、ニュートン法)が使われることが多いです。

このように、3次元の応力状態における主応力の求め方は、一見複雑に見えますが、基本的な手法は2次元の場合と同じで、応力テンソルの固有値を求めることで主応力を導くことが可能です。

第一不変量と第二不変量と第三不変量簡単な説明

応力テンソルの不変量とは、そのテンソルが表す物理量がどのような座標系で表現されていても変わらない特性を表す数値です。それぞれの不変量は次のように定義されます。

第一不変量(I1)

テンソルの対角成分(通常、正規応力)の和です。これは物体に作用する応力の大きさを概ね示します。3次元の場合、これは \(\sigma_x + \sigma_y + \sigma_z\) となります。

第二不変量(I2)

テンソルの主対角成分間の相互作用(せん断応力を含む)を表します。これは物体の歪みを示す指標として使われます。3次元の場合、これは \(\sigma_x \cdot \sigma_y + \sigma_x \cdot \sigma_z + \sigma_y \cdot \sigma_z - \tau_{xy}^2 - \tau_{xz}^2 - \tau_{yz}^2\) となります。

第三不変量(I3)

テンソル全体の情報を考慮する値で、物体の変形や歪みの程度を総合的に評価する指標として用いられます。3次元の場合、これは \(\sigma_x \cdot \sigma_y \cdot \sigma_z + 2 \cdot \tau_{xy} \cdot \tau_{xz} \cdot \tau_{yz} - \sigma_x \cdot \tau_{yz}^2 - \sigma_y \cdot \tau_{xz}^2 - \sigma_z \cdot \tau_{xy}^2\) となります。

これらの不変量は、物体の応力状態や歪み状態を評価する上で重要な指標となります。

 

まとめ

主応力は、物体に作用する力が最大となる方向における応力のことで、材料がどの程度変形するかや破壊するかを理解するための極めて重要な概念です。

物理学の一部として生まれたこの概念は、現在では構造設計や材料選択の決定において重要な役割を果たしています。初心者の方々も、主応力の重要性を理解し、その計算方法を学ぶことで、物体が力にどのように反応するかを理解し、より優れた設計を行うことが可能になります。

主応力の理論を学ぶことで、我々は自然界の力の法則について深い理解を得ることができます。その知識は、私たちがより安全で効率的な構造を設計し、建造する上で重要な役割を果たします。主応力の理論は、我々が住む世界をより理解し、より良くするための鍵となる知識です。

 

 

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  • この記事を書いた人

だるまる

製造業のものづくりエンジニア|計算力学技術者固体1・2級|CAEと材料力学を武器に製品開発を実施|自分の中でのCAEの使い方・勘所を書きます

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