技術系 材料力学

材料力学の基礎:熱応力

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熱応力とは、物体が熱によって変形したり、損傷を受ける現象を指します。熱応力は高温環境下で特に顕著に現れ、構造物の耐久性や安全性に深刻な影響を及ぼすことがあります。本記事では、「熱応力」に関する基本的な概念から影響について解説します。

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熱応力とは何か

熱応力とは、物体が温度変化によって受ける応力のことを指します。物体の一部が非均一に加熱または冷却されると、その部分と他の部分との間に温度差が生じます。この温度差によって物体内部に内部応力が発生し、それが熱応力として現れます。熱応力は材料の変形や損傷の原因となることがあり、特に大きな構造物や高温環境下で重要な要素となります。

例えば、鋼製のパイプが一部だけ高温の流体に接している場合、その部分が膨張して応力を発生させます。このような状況では、材料の特性や熱伝導率などが重要な要素となります。適切な設計と材料選定によって、熱応力を最小限に抑えることが求められます。

熱応力は物体内部に生じる応力の一つで、温度変化によって引き起こされます。熱応力は材料の特性によって異なり、構造物の変形や損傷に影響を及ぼすことがあります。橋や建築物、エンジンなど、高温環境下での設計や解析では、熱応力の考慮が重要となります。これらの特徴を理解し、適切な解析手法や材料の選定を行うことが重要です。

 

熱応力の数値解析手法

熱応力の数値解析手法には、有限要素法が一般的に用いられます。有限要素法では、物体を有限個の要素に分割し、それぞれの要素の熱応力を計算して全体の熱応力を求めます。この手法は複雑な形状の物体や複数の材料を含む構造物にも適用可能で、高度な解析が可能です。数値解析手法を用いることで、現実的な条件下での熱応力の評価が行えます。

熱応力を計算する手順

熱応力を計算する手順は以下のようになります。

  • 材料の特性を調査する。熱膨張率などのデータを取得します。
  • 物体の形状と寸法を測定または設計情報から取得する。
  • 温度変化を入力する。熱応力の計算には、初期温度と最終温度の差が必要です。
  • 計算式に値を代入して、熱応力を計算する。
  • 必要に応じて解析手法を用いて、より正確な熱応力の評価を行うことができます。

熱応力の理論式

熱応力の一般的な式は次のように表されます:

\[ \sigma_t = \alpha \cdot E \cdot \Delta T \]

ここで、各変数の意味は以下の通りです:

  • \(\sigma_t\): 熱応力(Thermal stress)(単位:Pa(パスカル)または N/m²)
  • \(\alpha\): 熱膨張係数(Thermal expansion coefficient)(単位:1/K(1/ケルビン)または 1/°C(1/摂氏度))
  • \(E\): ヤング率(Young's modulus)または弾性率(Elastic modulus)(単位:Pa)
  • \(\Delta T\): 温度変化(Temperature change)(単位:Kまたは°C)

熱応力の導出方法

熱応力の導出は、物体の熱膨張に対する応力を考えることから始まります。以下に導出の概要を示します:

    1. 初めに、物体が温度変化によってどれだけ膨張または収縮するかを計算します。これは熱膨張係数(\(\alpha\))を用いて次のように表されます:

\[ \Delta L = \alpha \cdot L \cdot \Delta T \]

    1. 次に、物体の長さが変化することによって生じる応力を考慮します。物体の応力は、応力とひずみの関係を表すフックの法則に基づいて計算されます。

\[ \sigma = E \cdot \varepsilon \]

    1. 物体の長さが変化する場合、ひずみは次のように計算されます:

\[ \varepsilon = \frac{\Delta L}{L} \]

    1. これをフックの法則に代入すると、応力は次のように表されます:

\[ \sigma_t = E \cdot \frac{\Delta L}{L} \]

    1. 先ほどの熱膨張式(\(\Delta L = \alpha \cdot L \cdot \Delta T\))を代入すると、最終的な熱応力の式が得られます:

\[ \sigma_t = \alpha \cdot E \cdot \Delta T \]

 

熱応力評価を実施するには?

熱応力評価を実施するためには、以下の点に注意する必要があります。

  1. 材料の特性を正確に把握すること:熱膨張率や材料の変形特性を正確に測定することが重要です。
  2. 温度変化を入力すること:熱応力の計算には正確な温度差が必要です。
  3. 適切な解析手法を選定すること:物体の形状や材料特性に応じて適切な解析手法を選定します。
  4. 実験結果と比較すること:数値解析の結果と実験結果を比較し、解析の精度を確認します。

熱応力がもたらす問題

熱応力がもたらす問題は、主に以下のような点に集約されます。

一つ目は構造物の変形や損傷です。熱応力によって引き起こされる変形は、構造物の歪みやひずみとして現れることがあります。

二つ目は熱クラックや割れの発生です。熱応力が集中する部分では、クラックが生じる可能性があります。これらの問題を避けるためには、熱応力の評価と対策が必要です。

 

熱応力の影響を抑える一般的な対策

熱応力の影響を抑える方法には、いくつかのアプローチがあります。一つは材料の選定で、熱膨張率が小さい材料を使用することで応力を軽減します。

また、熱応力を分散させる設計や適切な冷却手段の導入も有効です。さらに、数値解析や実験を通じて熱応力を評価し、適切な対策を講じることも重要です。

熱応力の影響を最小限にするには?

熱応力の影響を最小限にするためには、設計段階からの適切な重要です。材料の選定や設計の最適化によって、熱応力を最小限に抑えることが可能です。

また、適切な冷却や断熱の導入、CAE解析を用いた応力分析による評価なども重要な手段となります。熱応力を最小化することで、構造物の耐久性や信頼性を向上できます。

まとめ

熱応力は物体の熱膨張や熱収縮によって引き起こされる重要な現象であり、構造物の耐久性や安全性に大きな影響を及ぼします。熱応力による構造損傷を防ぐためには、適切な材料選定や設計の最適化、熱応力評価と対策が欠かせません。数値解析や実験を通じて正確な熱応力評価を行い、適切な対策を講じることで、構造物の耐久性を向上させることが可能です。熱応力について理解し、対策を講じることで、より安全で耐久性のある構造物の実現に向けて努力していきましょう。

 

 

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  • この記事を書いた人

だるまる

製造業のものづくりエンジニア|計算力学技術者固体1・2級|CAEと材料力学を武器に製品開発を実施|自分の中でのCAEの使い方・勘所を書きます

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