・CAE解析は得意だけど物理的意味がわからない
・ミーゼス応力がわからない
・主応力がわからない
・主応力とミーゼス応力の使い分けがわからない
と主応力とミーゼス応力の使い分けで悩んでいませんか?
この記事では現役CAEエンジニアとして勤務している私が、主応力とミーゼス応力の使い分けに実践している手法や考え方を解説します。
記事の前半では、ミーゼス応力と主応力の定義を解説。後半ではその使い分けを紹介します。
ちなみに参考書籍はこちらです。CAEをどのように実践に活かしていくのか。構造力学の観点で事例を踏まえて解説されています。CAEの初心者にはうってつけの本です。
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本記事での材料設計の前提条件
さて、本題に入る前に前提条件の確認をします。
材料力学に限らず、必ず前提条件を確認するようにしましょう。
そうしなければ、検討内容が的外れになってしまい、時間を無駄にしてしまうからです。
では、本題に入りましょう。
構造設計において、降伏応力を超えない設計にするには、ミーゼス応力と主応力どちらで考えればいいのかを説明します。
実際には、降伏応力に対して安全率をかけて計算すると思います。
しかし、この記事では簡単にするため安全率は考慮しません。
ミーゼス応力は絶対値(スカラー量)
ミーゼス応力は、CAEにおける材料評価において、どこに一番大きな力が発生しているのかを判断するのに適しています。
なぜなら、ミーゼス応力は、スカラー量だからです。
スカラー量とは、大きさのみを持ち、向きを持ちません。
例えば、構造全体における ”一番負荷を受ける場所” を探すのに適しています。
注意点としては、角や材料の継ぎ目が応力解析上、高い値を示すことです。
応力は荷重を面積で除したものですよね。
角に近づくほど、面積が0に近づくため応力が無限大に発散するからです。
またミーゼス応力は、スカラー量で方向性を持ちません。
そのため負荷の高い箇所が引張応力か、圧縮応力かどちらが生じているかはわからないのです。
そこで、負荷の方向性を見るためにはX,Y,Z軸ごとの応力成分でのコンター図を確認するか、主応力で比較することが求められます。
ミーゼス応力はこちらの記事で解説しています
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主応力:引張か圧縮か
主応力は、ミーゼス応力における最大値の場所が引張なのか圧縮なのかを見極めるのに使用します。
これは、ミーゼス応力でのミスを減らすためです。
ミーゼス応力はスカラー量のため、引張か圧縮かは判断できません。
その点を主応力で判断します。
特に第1主応力です。
第1主応力が引張の最大応力を示しています。
引張応力が作用している点が壊れやすいと仮定すると、第1主応力とミーゼス応力の一致する点が、一番壊れやすい点と考えることができるのです。
ちなみに、第1主応力ベクトルと直行する方向でき裂が入ります。
主応力の詳しい説明をこちらの記事にまとめました。
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ミーゼス応力で最大負荷を確認し、主応力で負荷の方向を確認する
ミーゼス応力と主応力は、使い分けません。
併用して使います。
私は、実務では両方確認です。
このことを覚えておくと、CAE技術者の方は役に立ちますよ。
おまけ:ミーゼス応力は複合的な力を1軸の引張状態に置き換えたものです。
ミーゼス応力の知識を少しだけ。
製品には一方向の力だけではなく、複数の方向から力が生じていますね。
だから単純な引張試験のような強度評価が難しいのです。
つまり、複合的な負荷を受けているけど、『降伏応力を超えているの?』と疑問になるわけなんですね。
そこでミーゼス応力が使用されます。
ミーゼス応力はこれらの多軸の負荷を一軸引張試験に模したものと考えてください。
極端にいうと、複合的な負荷を一軸の力だけで表しているのです。
その指標がミーゼス応力となります。
つまり、ミーゼス応力は多軸の負荷を一軸に変換することで、降伏応力での判断を容易にするものなのです。
たとえば、降伏応力20MPaの材料に対して、σx=10MPa、σy=5MPa生じているとき降伏応力を超えていますか?
という疑問に対する答えにミーゼス応力が使用されます。
ミーゼス応力に変換すると25MPaになったとすると、降伏応力を超えていますね。
つまり、上記の条件では降伏していると判断できるわけです。
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