行列の中でも特別な性質を持つものに「単位行列」があります。単位行列は数学や物理学など多くの分野で重要な役割を果たす概念です。ここでは、単位行列の基本的な理解と具体例を交えて解説します。
単位行列の基本的な性質
単位行列は、正方行列(行と列の数が同じ行列)であり、対角線上の全ての要素が1で、その他の要素が0である行列です。通常、単位行列を \(I\) または \(I_n\) と表記します。ただし、\(n\) は行列の次数を表します。
以下に、2x2と3x3の単位行列の例を示します:
I_2 = \begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1 \\
\end{bmatrix}
\quad
I_3 = \begin{bmatrix}
1 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 1 \\
\end{bmatrix}
\]
単位行列の性質と応用
単位行列にはいくつかの重要な性質があります。
- 任意の正方行列 \(A\) に対して、\(AI = IA = A\) が成り立ちます。つまり、正方行列を単位行列と掛ける(または掛けられる)と、元の行列が変わらないことを意味します。
- 単位行列は行列の積における「1」の役割を果たします。行列 \(A\) と単位行列 \(I\) の積 \(AI\) は、行列 \(A\) を変化させずにそのまま返します。
- 行列の逆行列を求める際に、単位行列を用いて計算が行われます。
具体例を通じて理解する
単位行列がどのような性質を持つかを理解するために、以下の例を考えます。行列 \(A\) とその積 \(AI\) を計算してみましょう。
例として、以下の2x2行列 \(A\) を考えます:
A = \begin{bmatrix}
3 & -1 \\
2 & 4 \\
\end{bmatrix}
\]
行列 \(A\) と2x2単位行列 \(I_2\) の積 \(AI\) を計算します:
AI = \begin{bmatrix}
3 & -1 \\
2 & 4 \\
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1 \\
\end{bmatrix}
= \begin{bmatrix}
3 \cdot 1 + (-1) \cdot 0 & 3 \cdot 0 + (-1) \cdot 1 \\
2 \cdot 1 + 4 \cdot 0 & 2 \cdot 0 + 4 \cdot 1 \\
\end{bmatrix}
= \begin{bmatrix}
3 & -1 \\
2 & 4 \\
\end{bmatrix}
\]
結果は元の行列 \(A\) と同じであることがわかります。
まとめ
単位行列は、正方行列で対角線上の要素が1で他の要素が0の行列です。行列の掛け算や逆行列の計算などで重要な役割を果たします。単位行列の基本的な性質を理解し、数学や物理学などの幅広い分野で活用していきましょう。
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